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受付の人たちと一緒に残業をした。
院内に2万枚以上あるカルテ、最終来院から5年経過したものは捨てるので、若い番号の棚がスカスカになる。それらを詰めていって後半にスペースを作る作業だ。
途中で一度休憩になり、裏の部屋でみんなで煎餅を食った。僕の横には、たびたびこの日記に登場する受付Tさん。
「これ喉乾くなぁ・・」
「あ、ケンちゃんお茶持ってないの?」
大抵の人は自分のお茶を持っていて、蓋に名前を書き冷蔵庫に入れているが僕はあんまり飲むことはないので、冷蔵庫の中に僕の名前は無い。外に出て買ってこようかとも思ったが、少々だるいかも。
「誰かの飲んじゃえば?」
・・・いやいや、そらまずいだろ。おいしいかもしれないけど。
「じゃあ、私の飲んでいいよ。私、誰かの飲むから」
と、ほんの少しだけ残っているペットボトルを渡された。蓋にTさんのサイン入り。こりゃあ、ここで日記終わらせてもいいぐらいの展開だな。残りの煎餅を喰らいながら、ほんとに飲んでいいものか考える。
「あ、それとも外で買ってくるとか」
「あぁ、そうですね」
気づかないふりはするに限る。まぁ、買いに行くとするか。
「でもめんどくさいから、やっぱこれ飲みなよ」
どっちやねん。じゃあいただこうかしら、とペットボトルに口が触れたか触れないか、その刹那、
「そうだ!私のも買ってきて」
なにィ。だがそれは確かにいい案だ。行きますよ行きますとも。いいから金出せよ。
Oさん「私のもー」
静かなオリンピックを、三本のお茶を持って駆ける僕。