美しいTシャツ(前編)
あの日僕は激しく空腹だった。だがそれに気づいたのは家を出た直後だった。しかたない。セブンで何か買っていつものお気に入りの場所で食べるとしよう。
よく考えると財布も胃袋と同じぐらい空っぽだった。予算は300円だな・・。
僕はセブンのアメリカンドックが好きだ。しかも100円。これとコーヒーは購入決定。あとサンドイッチが食べた買ったけれど、それだと100円以上予算オーバーする。
こういう差があとあとストマックブローのように効いて来るんだ。おいしくないけど100円なのでチキン棒する。僕にはチキンがお似合いだよ。
お気に入りの場所というのは海沿いの道にあるベンチだ。そこは車道から隠れているし、そしてなにより人の往来がほとんどない。3メートルぐらい先にフェンスがあってその先はすぐに海。気持ちのいい場所です。
僕は好きなものは後にとっておく派なので、チキン棒から食べる。高校の時に誰かが「何が起こるかわからないから好きなものを先に食べる」と言っていた。それはいつの時代の話だ、と。飯半分しか食えずじまいなんてバラエティ番組しかないだろ。
チキン棒をそこはかとなく食べ終わり、おたのしみのアメリカンドッグを取り出した。パチンと二つに折って中身を絞り出すタイプのケチャップとマスタードを塗りたくる。
次の瞬間、右後方でワサッっと音がしたと思うと、目の前が真っ暗になっていた。
続く