二小両硬両玉

yamakem2004-10-26

 僕は壱八家が好きだ。

 壱八家とはご存知家系のラーメン屋。東戸塚と横浜にある。三年ほど前、ビリヤードをしまくっていた頃には毎日のように行っていた。食ったあとは必ず脂っぽいスープにやられて気持ち悪くなっていたが、それはそれでいいものだ。五日ぐらい連続で行った事もあるし、十枚以上ある玉子券を一ヶ月で使いきったこともある。その頃は怪我をすると傷口から豚骨醤油のスープが流れ出てきたものだった。

 それでも最近は僕の血もすっかり赤くなった。横浜でビリヤードをしなくなったというのもあるが、壱八家の味が落ちたのだ。

 そうなる前から感じていたのだが、微妙に横浜と東戸塚では味が違った。東戸塚の方がうまかった。最初の一口は違いを感じないのだが、食べている途中にうまくて加速していく感じが東戸塚にはあった。東戸塚が本店だからだろうか。

 だが東戸塚本店も横浜店の味になってきた。おそらく原因は、六本木や東戸塚に別名のお店を出したりするというよくわからない展開だろう。壱八家が拡大していくのは嬉しかったが、やはりあのうまさが失われたことは悲しかった。

 だけど今日、もう一度試してみようと思った。ただの気まぐれだが、僕の足は壱八家へ向かった。食券を買い店員さんに渡す。「硬めで」これはもうお決まりのオーダーだ。何流かといわれたら独眼流だろう。ラーメンがきた。ウズラの玉子が乗っているのが特徴だ。一口。懐かしい。だがこれだけじゃわからない。ずるずる、もぐもぐ、ずるずる、もぐもぐ。はっとした。そして、僕の箸は加速した。うまい、この感じだ、僕が好きだった頃の壱八だ。どのタイミングでウズラを食ったかわからないぐらい夢中で食った。今まで半ば義務的に飲み干していた脂っぽいスープも自然となくなった。そのかわり、どんぶりは僕の涙で満たされた。

 「ごちそうさまでしたー」歯に詰まったチャーシューと一緒に喜びを噛みしめながら店を出た。東戸塚の街並が違って見えた。ふぅ・・、気持ちわり。